書籍一覧|京都 下鴨 洛北の出版社「自費出版の北斗書房」

残照

九十歳を過ぎ、すっかり引退すべきときがきたと思い幾つかの雑篇をとり纏め小さな書物とし、それを親しくしている諸君に 送ったところ返書がたくさん来た…

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著者

柏 祐賢

価格
953円+税
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絶版
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在庫切れ重版未定
ISBNコード
ISBN4-89467-148-4
サイズ
B6版
頁数
100頁
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九十歳を過ぎ、すっかり引退すべきときがきたと思い幾つかの 雑篇をとり纏め小さな書物とし、それを親しくしている諸君に 送ったところ返書がたくさん来たが、その中に「書きたいだけ書き、 言いたいだけ言いしてきた君のこと、もう何も残りはないはずだ。これからは静かに余生をおくれ」というものがあった。

  • 第一
    親鸞様のお「墓」
    恵信尼さまのお墓
    一光三尊の「あみださま」を背負って関東に下向された親鸞さま
  • 第二
    兄妹合作の「あみださま」
    父の手によって掘り出された「鏡」の意義
    私から離れることのなかった小さな「磁石」
    一九二六年にもらった「メダル」の話
    「一光三尊」の「あみださま」を追いかけて
  • 第三
    頼山陽の「書」にまつわる「友情」
    朱色の表紙の『日本外史』二十二巻が教えるもの
    「鹿の角」に託された心情
  • 第四
    「墓地」にまつわる因縁話
    『筆書き原稿』顛末(てんまつ)記
  • 第五
    人の世の喜び

九十歳を過ぎ、すっかり引退すべきときがきたと思い、幾つかの 雑篇をとり纏め、小さな書物とし、それを親しくしている諸君に 送ったところ、返書がたくさん来たが、その中に「書きたいだけ書き、 言いたいだけ言いしてきた君のこと、もう何も残りはないはずだ。 これからは静かに余生をおくれ」というものがあった。

それは、はっきり言うと川野重任君(東大名誉教授)である。それを聞き私は「なるほど」と思った。 考えてみれば、二十五巻に上る私の著作集は、まさに「書きたいだけ 書き、言いたいだけ言い尽くしたもの」、これ以上、いったい何を 書こうと言うのか言おうというのか、もう残りの命数はそんなにないはずである。

もっとも、体力的には、すでに限界を超えており、その理屈は、 それとして通っているが、しかし「何もしないで」というと、 いままで「考え、言い、書き」することを自分の生涯のしごとと してきたものが、それをやめるということは、生活のリズムからしても、出きるはずのものではない。

そこでまた僅かな力をふりしぼって、「身辺雑論」、あるいは 「身辺語録」を出すことにした。 それは当然に、ささやかな『身の上ばなし』からはじめるほかが なかった。 この姿をじっと見ていた家内は、これがもっとも「あなたらしくて 良い」とほめてくれた。

この小著は、そんなことで、名付けて「残照」とした。 字書をくってみると、「残照」というのは「夕暮れの薄明かりに 照らし出される」光景のことらしい。 とすれば、この書物の名にふさわしい、といってもよかろうか。

ご一読賜るを得ば、光栄である。

(はしがきより)