ブログ|京都 下鴨 洛北の出版社「自費出版の北斗書房」

2015年6月5日

あえて、「紙の本」にこだわる

電子書籍元年といわれた2010年から、今年で5年目を迎えます。
ビジネス書や情報商材、またコミックなどの分野では随分普及したように思えます。
自費出版の分野でも、電子書籍による制作を勧める向きもあります。

ここでもう一度、紙の本と電子書籍の特徴を整理してみましょう。


【電子書籍】

携帯性に優れる
タブレットやスマートフォン、電子書籍端末などに保存することで、千冊分以上のデータを持ち歩くことができます。

データの活用
辞書や検索、音声化などへの展開ができます。

端末に左右される
電子書籍の規格はまだ統一されていませんので、異なる規格の端末では読み込むことができません。
また、端末の破損等によりデータが消失する恐れもあります。


【紙の書籍】

特別な装置が要らない
紙の本を読むためには、特別な装置は必要ありません。
ただその本だけがあれば良いのです。

書き込みができる(印を付けやすい)
紙の本であれば、本に書き込みをすることも、端を折って印をつけることもできます。

壊れにくい
電子書籍のように、データの破損で読めなくなるということは、まずありません。
保存状態さえよければ、それこそ何百年でも保存することができます。


電子媒体と紙媒体として比較すると、このようになります。
機能的な面でいえば、携帯性と検索性に優れた電子書籍と、体感的に読書ができる紙の書籍ということになります。

一方でこれを、自費出版という観点で考えてみます。
紙媒体で自費出版を行う最大の強みは、紙の本という「物」としてそこにあることだと思います。

立派な装丁の本は、書斎のインテリアの一部になったりします。
実際手にした時の重み、紙とインクの匂い、表紙の手触り。
それくらい紙の本は、「物」としての存在感が際立っているのです。
自費出版のような思い入れの強い本ですと、完成品を手にした時の充実感は格別のものがあります。
これは残念ながら、電子書籍にはないものでしょう。


ただしこれは、決して電子書籍を否定するものではありません。
携帯性や検索性、音声や動画の埋め込みなど、電子書籍ならではの長所があるのも、また事実です。
ビジネス書、実用書、辞書など、電子書籍に適した本もあります。
これは適材適所で、そのコンテンツや利用方法に応じて、最適な媒体を選ぶのが良いと思います。


北斗書房の母体は印刷会社です。
だからという訳ではありませんが、これまで紙の本づくりにこだわってきました。
特に自費出版の領域では、完成品を手に取っていただいた時に、最大限ご満足いただけるような本づくりに取り組んできました。


かつて音楽業界では、LPCDに、CDiTunesにという世代交代がありました。
環境の変化や技術的の進歩には目覚ましいものがあります。
今後、自費出版を電子書籍でつくる必然性が出てくるかもしれません。


それでもなお、今のところは、紙の本にこだわった自費出版の専門会社でありたいと考えています。
著者に寄り添い、本づくりを通じて「想いをカタチにする」お手伝いをさせていただきたいと思います。

自分史の構成―時間の流れを追う?深く掘り下げる?―

「自分史」とひと口に言っても、その内容や種類は様々です。

自分史を定義すると「過去から現在に生きる自分自身の歴史を何らかの形で記録にとどめるもの」ということができます。その内容や表現方法は非常に多岐にわたり「こうでなければならない」という決まった形はありません。
少し極端ですが、自分史作品の数だけ種類があるといえるのかもしれません。

とはいえ、そんななかでも構成や表現方法によりいくつかのタイプに分類できます。
構成は大きくふたつに分けられます。
「ここまでの半生を時間軸に沿ってまとめる」または「ひとつの時代や大きなエピソードを掘り下げる」です。
表現方法のことは別にして、自分史の構成を決める際の大事なポイントです。


 1.時間軸型 ― 時間の流れに沿ってまとめる
時間の流れに沿って時系列でまとめる方法は、自分史のなかでも最も一般的なまとめ方です。歴史書などはこの形式で記されることが多く「編年体」とも呼ばれます。
時間の経過に沿って記すことになりますので、全体の流れや構成がまとめやすいというメリットがあります。
この形で自分史を執筆される際には、まず年表をお作りになることをお勧めします。
一見回りくどいようですが、実際に年表に書いてみることで、全体の構成が明確になります。
また逆に、記憶の曖昧なところが明確になって、今後調べるべきこともはっきりします。
実際に年表を書く際は、埋められるところから書かれると良いでしょう。
書き進めるうちに、何かのはずみで忘れていたことも思い出せるかもしれません。
あまり気追い込まずに、気楽に書き進めることをお勧めします。
年表の作り方は、また機会をあらためてご説明します。


2.掘り下げ型 ― ひとつの時代や大きなエピソードを掘り下げる
これまでに起きた大きな出来事や時期を中心に、その経緯や背景を記していく方法です。
ある時代の回想録や、体験記、滞在記などがこれにあたります。
大きなテーマが一つあって、それを中心に書き記したい場合に適しています。
幼少期の思い出、学生時代、職業人として、あるいは家庭人として・・・・・・
そこには、忘れられない思い出や、人生の一大転機ともいえる出来事があったことでしょう。
そんな時代や場所に焦点を絞って書き記す方法です。
時間軸に沿ってまとめるよりもやや難易度は高いのですが、この書き方でまとめますと、自分史を通じて訴えたい内容を明確にすることができます。
時代背景やその時の心境、現在に与えた影響など、色々な角度から深く掘り下げて書かれますと、より内容が充実した読み応えのある一冊になります。
文芸の世界では「私小説」と呼ばれるものに近いです。


つまり、自分史の構成は「大きく全体をとらえる」か「一部分を深く掘り下げる」のどちらかということになります。

前者は時間の流れに沿って書きますので、半生記や家族史などはこの方法が適しています。
後者の場合は、時間または空間で切り取って深く掘り下げます。時間ですと「○○時代の記録」とか「△△体験記」となりますし、空間ですと「□□滞在記」などが代表的な例になります。

また、1と2の折衷案的なものとして、時間の流れに沿ってまとめつつ、あるエピソードだけ取り出し章を分ける方法もあります。


ご自分の書きたい内容をどのようにまとめるのか、悩ましくも夢が広がる楽しい工程です。
せっかくの自分史ですから、楽しみながら取り組んでいただければと思います。

北斗書房では、企画段階からのご相談もお受けしています、どうぞお気軽にご相談ください。