ブログ|京都 下鴨 洛北の出版社「自費出版の北斗書房」

2016年8月

エコノミック・アテンション その3 ―文章を分かりやすくするチェックポイント(2)―

前回に引き続き、文章をブラッシュアップするときの具体的なチェックポイントです。
主に今回は、文法的な視点によるチェック方法を紹介します。

5.主語と述語は近くに置く
主語と述語を離して置くと、読みづらい文章になります。
主語に対応する述語が離れたところにあると、主語と述語の関係が分かりにくくなり、読み手の混乱を招きます。
次の2つの例文は同じ内容を表していますが、主語と述語の位置を変えて短い文章の集まりにすることで、すっきりと読みやすくなります。

[例 ※黒色の太字が主語、赤色の太字は述語です]
× 当社は今年秋をめどに顧客満足度を上げるような品質管理体制の新しいしくみをつくるための準備ともいえるCSに関するアンケート調査を今回実施した。 

○ 当社はCSに関するアンケート調査を実施した。これは今年秋をめどに顧客満足度を上げるような品質管理体制の新しいしくみをつくるためで、本調査はその準備といえる。

6.修飾語と修飾される言葉は離さない
修飾語と被修飾語(修飾される言葉)が離れすぎていると、さまざまな解釈が生まれてしまい文章がわかりにくくなります。修飾語は、被修飾語の直前に置きます。

7.接続詞を多用しない
接続詞(「しかし」「そして」「・・が」など)には、文章の道筋をはっきりさせる働きがあります。その反面、接続詞の多すぎる文章は、文章の流れが悪くなり読みづらい文章になります。
チェック方法は簡単です、いちど接続詞を取って読み直してみるとよいでしょう。
文章の意味が変わらなければ、その接続詞は不要です。

8.同じ助詞を繰り返さない
例えば、助詞の「の」は、ひとつ文中で3つ以上つなげると、係りと受けの関係があいまいになり、分かりづらい文章になります。
こんなときは、言葉を書き換えることで助詞を減らすことで係り受けがはっきりします。

もう少し続きます。 

エコノミック・アテンション その2  ―文章を分かりやすくするチェックポイント(1)―

「良文=分かりやすい文章」を書くための第一ステップとして「とにかく書いてみる」ことをご提案しました。
まず書きたいことを書いて、それからブラッシュアップするという流れです。
今回は、具体的な見直しのポイントをご説明します。

1.ひとつの段落の内容はひとつに絞る
段落とは、本来一つのメッセージを伝えるために、いくつかの文が集まったものです。
メッセージが複数になると、その段落の趣旨がぼやけて解りにくくなります。
そんなときは、段落を分けてみましょう。

2.伝えたいことは段落の最初に置く
分かりやすい文章を書くためには、段落の最初で何を書こうとしているのかを伝えることも有効な方法です。
その段落で伝えたい趣旨を最初に置くことで、読み手はこれから文章の大まかな内容をあらかじめ把握して読み進むことができるので、文章に対する理解が深まります。

3.一文を短くする
長い文章は、どうしても構造が複雑になり、分かりにくいものになります。
読み返して分かりにくい文章は、「だれが」「なにを」などの5W1Hに立ち返って見直してみましょう。
文章を分割することで、案外すっきりした文章に変わります。

4.読み違いを防ぐ
読み手がいろいろな解釈ができるのは、文章として不完全です。
チェックする時は、読み手がどう解釈するか考えをめぐらしてみましょう。
読み違いを防ぐコツとしては、読点の入れ方を工夫することをお勧めします。
あまりに読点が多すぎるのは問題ですが、本来読点は文章をわかりやすく伝えるために必要なもので、誤解を避ける意味でも不可欠なのです。

読点を打つポイントは次の4点です

  • 読点は、主語のあとに打つ。
  • 文章が並立するときは、そのあいだに打つ。
  • 限定したり条件をつけたりするときには読点を打つ。
  • 時や場所、方法を示す語句のあとには読点を打つ。

このお話、もう少し続きます。

夏季休業のお知らせ

いつもこのブログをご覧いただきありがとうございます。

8月11日(木・祝)~16日(火)は夏季休暇をいただいております。

8月17日(水)より通常営業いたします。

ご迷惑をお掛けしますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

エコノミック・アテンション ―「読みやすさ」を考える―

前回のブログでは「名文」ではなく、分かりやすく伝わりやすい「良文」を意識した執筆をご提案しました。
では、具体的に「良文」とはいかなるものでしょうか。

アメリカの文章作法に「エコノミック・アテンション」という考え方があります。
直訳すると「効率的な認知」つまり、読み手に余計な負担なく理解してもらうという意味になります。

文章を追っていくと自然と内容が理解できる文章、これは良文の条件といえます。
奇をてらった表現や凝った演出は必要ありません。
必要なことは、文章としての整合性や正しい言葉づかいです。
そのうえで、音読した時のリズム感、文字の並びとしての見た目が整えばなお良いでしょう。

ただし、「完成度100%の文章」は、残念ながらあり得ません。
心がけひとつで完璧な文章が書ければ良いのですが、それはかなり難しいことでしょう。
これは、執筆を生業にしている方が、このことに日々頭を悩ませていることからもお分かりいただけると思います。
私達が「完成度100%」を意識すると、逆に必要以上に気負ってしまい、書きたいことも書けなくなってしまいます。

まずは「とりあえず書く」から始めましょう。
「名文」も「良文」もひとまず脇に置いて、自分が書きたいことを、とにかく書いてみます。

ここでの完成度は、あえて問いません。
書きたいことが一通り書き上げることができたら、50%は完成したといえるからです。
ここから見直しを行うことで、書いた文章を良文に磨き上げていきます。 

次回から、具体的な見直しのポイントを紹介していきます。