ブログ|京都 下鴨 洛北の出版社「自費出版の北斗書房」

本の仕様とはなんですか? その4 ―自費出版の“適正部数とは―

「何冊印刷しますか?」
自費出版を考え、出版社へ相談に出向くと必ず尋ねられます。
必要な紙の量、印刷費用や製本費用を算出するために必要だからです。

家族や知人に本を贈呈することが目的の自費出版の場合は「年賀状の枚数×1.2倍位」が、最低必要部数と言われています。
一方、書店販売を見据えた自費出版ですと、最低500部から、場合によっては1,000部以上を出版社から提示されることがあります。
この違いは、本が完成した後の、モノの流れ方に違いがあるからです。

前者の場合は、完成本を家族や親戚、知人に送り、国会図書館や地元の図書館、あるいは母校の図書館に寄贈する。ほぼこれで制作部数のほとんどが手元を離れるはずです。
何冊かは残りますが、これは想定外の反響があった場合の予備です。

一方、後者の場合は、商業出版の商習慣に則って流通させるために最低必要な部数があります。
(参考:本を売るということ~書籍流通の仕組み~

本のジャンルや内容にもよりますが、最低でも500~1,000部といわれており、これが書店販売で提案される部数の根拠でもあります。
この部数は、あくまで「流通に必要な部数」であり「売れる部数」ではないことにご注意ください。
そしてここに、必要以上に本を印刷することのリスクがあるのです。

 1.返本
ほとんどの本は「配本」と呼ばれる委託販売で流通します。
委託販売である以上、売れなければ返本として出版社に戻ってきます。
配本先の本屋で「売れない」と判断されると、書架に並ぶこともなく返本されます。

2.返本・買取にかかるコスト
返本された本は、出版社の倉庫に眠ることになります。
そして通常一定の期間が過ぎると廃棄されます。
これを著者が引き取る場合、本の買い取り費用を請求される場合があります。
これは、書店流通を全体とした自費出版も例外ではありません。

北斗書房では、必要部数からかけ離れて、たくさんの本をおつくりになることはお勧めしておりません。
過剰に印刷された本は、著者にとっても、その本にとっても不幸であると考えるからです。

本が詰まった段ボール箱が、いつまでもリビングを占拠している。
これを目にするたびに苦い気持ちになって、いつしか「自費出版なんかしなければよかった」と後悔の念に苛まれる。
著者と本にとって、これほどの不幸はありません。

今回の記事は、これから自費出版をお考えの方には、水を差すような内容かもしれません。
しかし、自費出版は本が完成して終わりではなく、ここから著者と本との長いお付き合いが始まるのです。

私共も、「一般的な」とか、「他の人は」でなく、著者と本にとってベターな印刷部数をご提案させていただきたいと考えています。

 

関連リンク

・本の仕様とは何ですか?

・本の仕様とは何ですか? その2 用紙について

・本の仕様とは何ですか? その3 製本について

 

 

 

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