著作物とは、日本の著作権法の定義によれば、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(2条1項1号)」と定義されています。
もちろん、自分史などの自費出版も立派な著作物にあたります。
そして著作物には必ず著作権が発生します。
今回は、そんな著作権に関わるお話です。
著作権とは
著作権はコピーライトとも呼ばれる「知的財産権」のひとつで、著作物を創作した際に著者に発生する権利です。
著作権法では、著作物の複製、貸与、放送などの権利は、著者が独占的に持つとしています。
簡単な言い方をすると「著作物は著者のもの」ということになります。
出版社と契約を結ぶ際、編集の手を加えることで著作権の所在が曖昧になる場合があります。
この点、契約書の条件を確認されることをお勧めします。
著作権の侵害
著者の許可なく勝手に複製したり、発表したりすることは著作権の侵害になります。
自費出版も例外ではなく、作品の著作権は著者にありますが、その一方で他人の著作物を無断で転載することは他の著者の著作権を侵害することになります。
著作権の対象外となる場合
著作権法では、次のような場合は著作権保護の対象外としています。
これらの例外を除いて著作物を利用する際には、著作権者の許諾を得る必要があります。
【法令】
・法令・告示・訓令・通達・判決など
・公開された政治上の演説など
・雑報及び時事の報道
・新聞紙又は雑誌に掲載された政治・経済・社会上の時事問題に関する論説(利用を禁止する旨の表示がないことが条件)
【特定利用による対象外】
・私的利用のための複製
・図書館資料の複製(非営利目的)
・文部科学省が定める学校での授業に必要な資料の複製・上映
・障害者のための教科用拡大図書や点字による複製・放送など
引用
一定の条件を満たした場合は、自分の著作に他人の著作の一部を引用することは許されます。
「引用」は自費出版作品にも良く見受けられるケースですので、また機会をあらためて詳しくご案内したいと思います。
自費出版作品に著作権があるのと同様に、他の方の著作物にもやはり著作権があります。
お互いの作品に敬意を表する意味でも、著作権の取り扱いには充分な注意が必要です。
コンプライアンス(法令遵守)に配慮し、胸を張って自分の作品を示せるようにしましょう。
電子書籍元年といわれた2010年から、今年で5年目を迎えます。
ビジネス書や情報商材、またコミックなどの分野では随分普及したように思えます。
自費出版の分野でも、電子書籍による制作を勧める向きもあります。
ここでもう一度、紙の本と電子書籍の特徴を整理してみましょう。
【電子書籍】
携帯性に優れる
タブレットやスマートフォン、電子書籍端末などに保存することで、千冊分以上のデータを持ち歩くことができます。
データの活用
辞書や検索、音声化などへの展開ができます。
端末に左右される
電子書籍の規格はまだ統一されていませんので、異なる規格の端末では読み込むことができません。
また、端末の破損等によりデータが消失する恐れもあります。
【紙の書籍】
特別な装置が要らない
紙の本を読むためには、特別な装置は必要ありません。
ただその本だけがあれば良いのです。
書き込みができる(印を付けやすい)
紙の本であれば、本に書き込みをすることも、端を折って印をつけることもできます。
壊れにくい
電子書籍のように、データの破損で読めなくなるということは、まずありません。
保存状態さえよければ、それこそ何百年でも保存することができます。
電子媒体と紙媒体として比較すると、このようになります。
機能的な面でいえば、携帯性と検索性に優れた電子書籍と、体感的に読書ができる紙の書籍ということになります。
一方でこれを、自費出版という観点で考えてみます。
紙媒体で自費出版を行う最大の強みは、紙の本という「物」としてそこにあることだと思います。
立派な装丁の本は、書斎のインテリアの一部になったりします。
実際手にした時の重み、紙とインクの匂い、表紙の手触り。
それくらい紙の本は、「物」としての存在感が際立っているのです。
自費出版のような思い入れの強い本ですと、完成品を手にした時の充実感は格別のものがあります。
これは残念ながら、電子書籍にはないものでしょう。
ただしこれは、決して電子書籍を否定するものではありません。
携帯性や検索性、音声や動画の埋め込みなど、電子書籍ならではの長所があるのも、また事実です。
ビジネス書、実用書、辞書など、電子書籍に適した本もあります。
これは適材適所で、そのコンテンツや利用方法に応じて、最適な媒体を選ぶのが良いと思います。
北斗書房の母体は印刷会社です。
だからという訳ではありませんが、これまで紙の本づくりにこだわってきました。
特に自費出版の領域では、完成品を手に取っていただいた時に、最大限ご満足いただけるような本づくりに取り組んできました。
かつて音楽業界では、LPがCDに、CDがiTunesにという世代交代がありました。
環境の変化や技術的の進歩には目覚ましいものがあります。
今後、自費出版を電子書籍でつくる必然性が出てくるかもしれません。
それでもなお、今のところは、紙の本にこだわった自費出版の専門会社でありたいと考えています。
著者に寄り添い、本づくりを通じて「想いをカタチにする」お手伝いをさせていただきたいと思います。
「自分史」とひと口に言っても、その内容や種類は様々です。
自分史を定義すると「過去から現在に生きる自分自身の歴史を何らかの形で記録にとどめるもの」ということができます。その内容や表現方法は非常に多岐にわたり「こうでなければならない」という決まった形はありません。
少し極端ですが、自分史作品の数だけ種類があるといえるのかもしれません。
とはいえ、そんななかでも構成や表現方法によりいくつかのタイプに分類できます。
構成は大きくふたつに分けられます。
「ここまでの半生を時間軸に沿ってまとめる」または「ひとつの時代や大きなエピソードを掘り下げる」です。
表現方法のことは別にして、自分史の構成を決める際の大事なポイントです。
1.時間軸型 ― 時間の流れに沿ってまとめる
時間の流れに沿って時系列でまとめる方法は、自分史のなかでも最も一般的なまとめ方です。歴史書などはこの形式で記されることが多く「編年体」とも呼ばれます。
時間の経過に沿って記すことになりますので、全体の流れや構成がまとめやすいというメリットがあります。
この形で自分史を執筆される際には、まず年表をお作りになることをお勧めします。
一見回りくどいようですが、実際に年表に書いてみることで、全体の構成が明確になります。
また逆に、記憶の曖昧なところが明確になって、今後調べるべきこともはっきりします。
実際に年表を書く際は、埋められるところから書かれると良いでしょう。
書き進めるうちに、何かのはずみで忘れていたことも思い出せるかもしれません。
あまり気追い込まずに、気楽に書き進めることをお勧めします。
年表の作り方は、また機会をあらためてご説明します。
2.掘り下げ型 ― ひとつの時代や大きなエピソードを掘り下げる
これまでに起きた大きな出来事や時期を中心に、その経緯や背景を記していく方法です。
ある時代の回想録や、体験記、滞在記などがこれにあたります。
大きなテーマが一つあって、それを中心に書き記したい場合に適しています。
幼少期の思い出、学生時代、職業人として、あるいは家庭人として・・・・・・
そこには、忘れられない思い出や、人生の一大転機ともいえる出来事があったことでしょう。
そんな時代や場所に焦点を絞って書き記す方法です。
時間軸に沿ってまとめるよりもやや難易度は高いのですが、この書き方でまとめますと、自分史を通じて訴えたい内容を明確にすることができます。
時代背景やその時の心境、現在に与えた影響など、色々な角度から深く掘り下げて書かれますと、より内容が充実した読み応えのある一冊になります。
文芸の世界では「私小説」と呼ばれるものに近いです。
つまり、自分史の構成は「大きく全体をとらえる」か「一部分を深く掘り下げる」のどちらかということになります。
前者は時間の流れに沿って書きますので、半生記や家族史などはこの方法が適しています。
後者の場合は、時間または空間で切り取って深く掘り下げます。時間ですと「○○時代の記録」とか「△△体験記」となりますし、空間ですと「□□滞在記」などが代表的な例になります。
また、1と2の折衷案的なものとして、時間の流れに沿ってまとめつつ、あるエピソードだけ取り出し章を分ける方法もあります。
ご自分の書きたい内容をどのようにまとめるのか、悩ましくも夢が広がる楽しい工程です。
せっかくの自分史ですから、楽しみながら取り組んでいただければと思います。
北斗書房では、企画段階からのご相談もお受けしています、どうぞお気軽にご相談ください。
自分史には、何より自分の半生を記録としてまとめて、後世に伝えるという役割があります。
しかし、自分史をつくる意義はそれだけに留まりません。
自分史を具体的な形にまとめる過程では、自己の客観的な振り返りを繰り返します。
それは、「自分とは何者か」という自己認識をより明確に持つことになります。
そして、これから先の人生の指針を見つけることにもつながります。
これらは自分史づくりを通して得られる大きなメリットであり、言い換えれば「自分史をつくる意味」ともいえます。
単なる過去の振り返りに終わらない自分史づくり。
ぜひこの機会に取り組んでみられてはいかがでしょうか。
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多々ある自費出版のなかで、最も代表的なのは自分史です。
読んで字のごとく、自分自身のこれまでの半生を振り返り、一冊の本にまとめたものです。
少しだけ「自分史」の歴史を紐解いてみます。
すでに戦前から、「自伝・自叙伝」という言葉はありましたが、当時は偉人や有名人の著作がほとんどで、一般的な人々が自分の半生を記したような本はごくわずかでした。
自伝、伝記、自叙伝などに「自分史」というジャンルが仲間入りしたのは、1975(昭和50)年のことです。
歴史家である色川大吉さんによる『ある昭和史―自分史の試み』という本のなかで、初めて「自分史」という言葉が使われたといわれています。
「自分史」という言葉ができたことにより、自己表現として本を書くことが一般にも普及し、いわゆる自費出版ブームのきっかけともなりました。
その一方で、「自分史は有名人や名士が記すもの」というイメージもまだまだ強く「自分にはわざわざ自分史としてまとめるようなことはない」とか、「文章を書くのは苦手だ」などの理由で、執筆に踏み出せない方も多いのかもしれません。
自分史は決して難しいものでも、また偉人達だけのものでもありません。
一人ひとりの人生は違ったものですし、その人生は他に変えることのできない、世界にただひとつだけの記録であるといえます。
自分史を通じて自己の半生を振り返り、自分自身の思いもかけない側面に光を当てることで、今まで気づかなかった新しい自分に気づかされることがあります。
そこから、これからの人生に向けた新たな指針を手に入れることができるでしょう。
そういう意味では、どなたでも、少なくとも人生に一回は「自分史」という本をつくることが出来るともいえます。
一般的には、現役を退かれたご年配の方がお作りになるイメージの強い自分史ですが、最近では、経営者や企業のリーダーが、人生観や仕事論を後進に伝えるために執筆されるケースが増えています。
また、就職活動中の方が就職活動のための自己分析ツールとして自分史づくりに取り組まれる場合もあります。
自分を振り返ることに、年齢は関係ないのです。
北斗書房でお作りした自分史にも、いろいろなバラエティに富んだ作品がありました。
このブログでも、そんな実例をご紹介しながら、色々な自分史をご案内しようと思います。
懐かしい思い出の場所に訪れたり、懐かしい知人に再会したり。
自分史をつくる過程では、そんな思いもかけない楽しみを得ることができます。
過去を振り返り、現在を見つめ、そして未来を照らす、私そのものの歴史。
そんな自分史づくりに、少しでも多くの方に取り組んでいただければ幸いです。
本文が進み、最後に入るのは「あとがき」です。
一般的に、奥付は出版社の責任において表示するものと考えております。
ですので、著者に執筆をお願いする責任範囲としましては「まえがき」から「あとがき」までとなります。
「まえがき」は、本を手に取った人に、この本がどんな本かを紹介するものです。
一方「あとがき」は、本編を読み終えた方に向けたメッセージになります。
映画に例えるならエンドロールになりますでしょうか。
あとがきが付いている本は、読後感の良い、一冊の本として締まった仕上がりになります。
一般的には、あとがきには主に次のような内容を記します。
自費出版の場合ですと、家族や知人に向けたメッセージを記されることもあります。
また参考文献がある場合は、あとがきの最後に掲載します。
「あとがき」には、必ずこう書かねばならないという決まりはありません。
強いて言えば「これまでの慣習上このように書く場合が多い」という傾向がある程度です。
基本的には、公序良俗に反しない範囲で自由にお書きいただくのが良いと考えています。
もちろん、作品の内容や執筆の経緯によって、その内容も変わるでしょう。
たとえどんな内容であっても、そのあとがきを読んだ人が、そこに何かしらの共感を得ることができたとしたら、充分にあとがきの役割を果たしているといえます。
「さあ、あとがきを書くぞ!」と気負いこむと、かえって書き難くなるものです。
自費出版の場合は、まずは執筆にあたって苦労を感じたこと、発見したこと、感動したことなど、何か心を動かされたことを率直にお書きになるのが良いのではないかと思います。
そのうえで、執筆に当たってご協力いただいた方や、応援してくださった方、何より、自分の著書を手に取ってくださった読者に向けた感謝のメッセージがあれば、なおよろしいかと思います。
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自費出版に限らず、書店に並ぶ本の多くには、「まえがき」や「あとがき」が入っています。
弊社にお越しのお客様からは「まえがきは何を書いたらいいのか」「まえがきは書いたのであとがきは必要無いか」といったご質問をよくお受けします。
今回は、「まえがき」の役割についてご説明しようと思います。
「まえがき」とは、その本の大まかな内容を紹介するものです。
典型的な例として、ビジネス書があります。
何をテーマとした本か、誰に向けて書いたものか、この本を通じて何を訴えたいのか。
多くのビジネス書の前書きには、これらのことが網羅されています。
「ビジネス書を選ぶときには、まえがきを読むと良い」というお話をよく聞きます。
まえがきには、その本の肝になる部分が要約して記されています。
ですから、まえがきを読むと本の良し悪しが判るという理屈です。
本の構造から考えても、確かにこれは理に叶っているといえます。
一方、著者以外の方が書くまえがきもあります。
推薦文や、友人からの寄せ書きがこれにあたります。
また、遺作集など故人を偲んでつくる本の場合は、まえがきに変わるものとして追悼文が入ります。
追悼文の執筆は、著者のご遺族や故人が生前親しかった方に執筆をお願いするのが一般的です。
自費出版作品の場合は、ビジネス書ほどシビアではありませんが、自身の作品を紹介するつもりでお書きになると良いのではないかと思います。
なぜこの本を書こうと思ったのか、何を伝えたいのか、どんな方に読んでもらいたいか、等を考えながら書くと良いでしょう。
また、まえがきをよく推敲することは、自分の作品の見直しにもつながります。
せっかくの作品ですから、まえがきもしっかり書き上げて、より完成度の高い本にされることをお勧めします。
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商業出版と自費出版の大きな違いのひとつは「完成した本は誰のものか」です。
このことは、本の内容に誰が責任を持つのかとも深くかかわっています。
今回はこのあたりのお話をさせていただきます。
商業出版
商業出版の場合、完成した本の所有権は出版社にあります。
出版社は本を売ることで利益を獲得します。そのために、原稿料や制作費用などの「コスト」を投入して本を作ります。だからこそ、出版社は「売れる本」にするための、最大限の努力をするのです。
場合によっては、著者に対して内容の訂正を求めるケースもあります。
販売に際しても、価格を幾らに設定するのか、どのような販促を行うのか、完売後は重版(本を増刷すること)するのか、逆に廃版にするのか、全てが出版社の判断になります。
このような経緯から、商業出版の場合は所有権と内容に対する責任は出版社が持ちます。
著者には、完成本のうち何冊か進呈されますが、それ以上の冊数を求める場合、出版社から本を買い取ることになります(割引があるようですが、割引率は契約により異なります)。
自費出版
自費出版の場合は、制作費用を著者が負担しているわけですから、完成した本は著者のものになります。
どんな装丁でどんな仕上りの本にするかは、著者の自由です。自分の好きなデザインで、自分の想いをカタチにすることが出来るのです。
著者の所有物ですから、公序良俗に反しない限り、内容は著者の意向が100%反映されます。
その一方で、内容に関する責任も著者にある、ということになります。
費用を著者が負担し、内容も著者の意向がほぼ反映されることから、完成した本は著者のものになります。また、内容に関する責任も著者ということになります。
せっかくの自費出版作品ですから、本づくりをお考えの際には、信用のおける出版社と打ち合わせしながら、内容もしっかりと吟味されることをお勧めします。
「共同出版」「共創出版」「協力出版」などの名称で出版を勧める出版社の場合、著者と出版社がそれぞれ費用を負担している形になりますので、完成した本の所有権などは契約条件により異なります。
この点は、本の完成後に起きやすいトラブルのひとつですので、正式に依頼される前に、契約条件を確認されることをお勧めします。
北斗書房では、「自費出版」の完成本は著者のものというスタンスを取っています。
また、専属の校正スタッフもおりますので、原稿に関するご相談もお受けしております。
どうぞお気軽にお問い合わせください。